フィレンツェの恋人~L'amore vero~
気丈だった。


しっかりしすぎている口調だった。


でも、明らかに普通じゃない。


母親をあんな形で亡くした人間とは思えないくらい、気丈だったよ。


煌は僕たちが思っている以上に繊細な人間だからね。


だから、逆に心配でたまらないんだ、と添えたパスカルの不安は見事に的中した。


朝から降り続いた小雨が上がったのは、日が暮れ始めた頃だった。


ジョゼットから電話があったのもまた、その頃だった。


ようやくTGV(超高速列車)の運行が再開した事、でも、チケットの予約が取れなかった事。


だから、今夜の寝台列車に乗る事にした事。


明日の朝パリに着くから待っていて、とジョゼットは気が気でない様子だった。


私がどんなに「平気だ」と言っても、何が平気だというのかと言い返してくるジョゼットには頭が下がった。


ジョゼットは私の気持ちを全てお見通しなのだった。












外はすっかり暗くなり、夜が訪れていた。


キッチンでホットミルクを入れリビングに戻り、ソファーに座り、窓の外に視線を投げ出す。


冬の雨上がりの夜空にはいくつかの星が輝き、そして、下弦の月がのぼっていた。


ひと口、ホットミルクをすすり、ふと、疑問を抱いた。


そういえば。


煌もパスカルも、煌の母もだ。


なぜかあの星座に異常な執着を見せていた。


冬の星座。


オリオン。


そして、その星座に負けないくらい、月にも執着していた。


オリオンとムーンは一体、何を意味しているのだろうか。


パスカルから2度目の電話をもらったのは、20時をとうに過ぎた頃だった。


出ると、パスカルは開口一番に言った。


そこに煌はいるか、と。
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