トルコの蕾




絵美は昼間のうちに念入りに掃除を終えた、髪の毛一本たりとも落ちていない自分の部屋に三角座りをし、テーブルに置いた携帯電話を見つめながらまるで番犬のようにじっと正樹からの連絡を待っていた。


明日は付き合ってから初めてお互いの休みが合うことがわかり、正樹の提案で、車で少し遠くの綺麗な海まで海水浴に行く計画になっていた。

『仕事が終わったら会いに行くよ、少しだけ仮眠をとって早朝に車で出発しよう。』と正樹は言った。


それはつまり今晩この部屋に、仮眠とはいえ正樹が泊まる、ということを意味していた。


もう子供ではない。部屋に恋人が泊まりに来る、それはもう間違いなく、そういうことなのだ。



絵美はそのことに気づいてから、女性誌をまとめ買いし、セックス特集や彼とのお泊り特集、彼との初エッチでのタブーなどのページに付箋をつけて何度も何度も読み返していた。


付き合った彼との初エッチ特集で、男性が彼女の綿の下着にドン引き、という記事を読んで慌てて下着を買いに行き、男性に好感度が高いという、淡いピンクのサテンとレースの組み合わさった下着を購入した。


初エッチでのタブーで、体毛の処理を怠って大失敗!という記事を読み、慌ててお風呂で全身のムダ毛をつるつるに剃り上げた。


彼女のサメ肌にドン引き!という記事を読み、ボディークリームを購入して毎日お風呂上がりに塗るようになった。


それでも絵美は、正樹は今まで何人の、どんな女性と体の関係を持ったのだろうかと考えると、今にも泣き出しそうになってしまうのだった。







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