トルコの蕾
店いっぱいに飾られた、数え切れない種類の花をぐるりと眺めながら、猛は麻里子の顔を思い浮かべていた。
麻里子には花がよく似合う。
猛は、この店の店長らしき女が沢山の中から次々と花を選び、花束に組み入れていく様子を興味深く眺めた。
女はものすごいスピードで、選びとった花の葉を取りハサミで切りそろえて丁寧にきっちりと花束を仕上げていく。麻里子が花束を受け取るところを想像して、猛は思わずふっと笑った。
「こういった感じで、いかがでしょうか?」
店長らしき女は左手に花の束を持ち、猛に組み終えた花を見せて確認した。
花束は、青みがかった濃いめのピンクと淡い紫色を基調にした色合いでまとめられており、落ち着いた大人の女性である麻里子にはぴったりだと猛は思った。
「いいね、ありがとう」
猛が右手でオーケーサインを出すと、店長らしき女はにっこりと笑い、「では、ラッピングさせていただきますので少々お待ち下さい」と言ってカウンターの中に入って行った。
どこかで見たことのある顔だと思っていたら、いつだったか麻里子が妊娠中に行った喫茶店で見た女だったと猛は思い出した。
「あれはきっとお花屋さんね」
確かそう麻里子が言っていた気がする。