トルコの蕾
沈黙を破るように「久しぶりだな」と太一が言った。
何度も何度も、当たり前のように座った太一の車の助手席は、助手席から見る運転席の太一の横顔は、今までとまるで違って見える。
「びっくりしちゃった」
震える声で、真希は言った。
「店の外見たら、タッちゃんの車がいるんだもん」
「迷惑だったか?」
真希の顔を見ずに太一は言った。
「タッちゃん…、あたし…」
何から伝えればいいのだろう。
10年以上も前から好きだった。
好きになってはいけない人だと思っていた。
「…タッちゃん…あたし…」
「…真希…、ごめん」
太一が真希の言葉を遮るように言った。
「俺…やっぱり真希のこと、忘れらんなくて…。馬鹿みたいなのはわかってる。…だけど…どうしても今日、お前に会ってちゃんと話したかったんだ」
太一はそう言って、ポケットの中から小さな紙の包みを取り出した。
「…これ、受け取って」
真希は小さな小さな包みを受け取った。
白い包みを指で開ける。
「…タッちゃん…?これ…」
包みの中身と太一の顔を交互に見る。
「お前なら、真希ならわかるだろ?それがどういう意味か」
太一は俯いて、情けない顔でそう言った。
「俺…お前の為にわざわざ本で調べたんだからな。…ちょっと…強引かもしれないけど…、その…それが俺の気持ちだから」