トルコの蕾






真希が武と知り合ったのは花屋に勤めてすぐ、もう五年も前のことだ。



武はその時点では、まだ独身だった。



正確に言うと予約済み、『人の物になる直前の男』だった。



武は麻里子と婚約中で、結婚式を1ヶ月後に控えていたのだ。





あの日、

武は真希がアルバイトとして見習いで働いていた、オフィス街のフラワーショップにやってきた。



結婚式を間近に控えた武がフラワーショップを訪れた理由は、自分の結婚式で新婦の麻里子にサプライズで花束を贈る為。



その武の接客を担当したのが、真希だった。



二十二歳だった当時の真希にとって、スーツを颯爽と着こなしたその頃の武は、まともに目も合わせられないほどに成熟した色気を纏った、大人の男性だった。



店員と客として会話したほんの5分で、真希は恋に落ちていた。

簡単な女だといわれれば、きっとそうだったのだろう。

『結婚式を目前に控えた大人の男』に恋をした真希が、それ以来よく店に立ち寄るようになった武の『友人兼愛人』になるのに時間はかからなかった。





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