トルコの蕾
絵美はいつも通りマフラーをぐるぐる巻きにして、白いダウンコートを羽織ると真希に見送られて夜の街を駆け出した。
白い息を吐き出して、電車のホームに滑り込む。
渡すことなんて到底できないと思っていたし、思いを伝えるなんて出来るはずがないと思っていたけれど。
今日はバレンタインデーだ。
もしかしたら神様が味方してくれるかもしれないと絵美は思った。
勇気を出そう。
勇気を出して彼に会いに行こう。
絵美は用意していたチョコレートをぎゅっと抱きしめた。