+チック、
「―――さん!!!!」
彼は私の名前を呼びながら必死に私を掴もうとした。
私も男に引き離されながらも懸命に手を伸ばした。
あと少し、
指が掠めてあと少しで手を握れる事ができそうだったのに・・・
呆気なく、私と彼は引き離された…
そして私は男にトンネルから引きずり出された。
彼はその場から動く事ができない。だからその場で崩れ落ちた。
彼の足下には沢山の花束が置かれていた。
トンネルから引きずり出された私は涙が止まらなかった。
魔法が解けてしまったから・・・
事実を受け入れなくてはならなくなったから。
この男のせいで、私達の遊びは終わってしまったんだ・・・
力を失った腕は途端に引力に引かれて落ちてしまった。
それにつられて、体も地面に引きつけられた。
力無く地面に倒れ込む私を月の光は容赦なく照らした。
涙は宝石の様にぼろぼろと落ち、黒いアスファルトに飲み込まれた。
『――・・・大丈夫だよ。大丈夫。俺が愛してやるから。好きだよ、――』
男はそう言って倒れ込んでいる私に後ろから覆い被さる様に私を抱き締めた。
とても暖かかった…汗ばむ程に暖かかった…
初夏の気候にはその温もりは暑すぎる。
でも、私にはもう、振り払う気力は無かった。
男はそんな私を満足そうに何度も抱き締めた。