だって、こんなにも君が好きだから。
そんな風に人を見下してると、いつか痛い目みるよ。
別に見下していたわけじゃない。
私は、図に乗っていたのだ。
努力して、努力して。
誰にも負けないと。
そんな風に自分を過評しているから、こんな目に遭う。
現に、男二人にこんなあっさりと負けた。
すまない、平良木。
お前の言う通りだ―――。
「…紫乃!!」
確かに聞こえたその声に、私は一気に現実に押し戻される。
「っなにやってんだてめぇら!!」
激しい怒号は、私に向けられたものではなくて。
気が付いたら、私の自由を奪っていた男たちの手は離れていた。
「…平良木、龍…?」
肩で息をするそいつは、まさしく平良木 龍で。
けどいつもの、あのお茶らけた雰囲気もニヤついた適当な表情もどこにもなかった。
「…はぁ、はぁ。…バカ!なにやってんだよ!!」
突然発せられた怒声に、思わず肩が跳ねる。
「もう少しで、なにされそうだったわかってんのか!」
なんで、なんでだ。
なぜ私が叱られねばならない。
「女の子一人で、こんな人っ子一人いない暗い道歩いて、襲ってくださいって言ってるようなもんだろ!それを…」
…なぜ私が、泣かねばならない…!!
ポツリ、ポツリと頬を涙が伝った。
その途端、意気消沈したように平良木は声を張り上げるのをやめた。