だって、こんなにも君が好きだから。
ああ、そうか。
私は怖かったのだ。
男二人に押さえつけられて、なにも出来なくて。
自分の無力さを思い知らされて。
「…紫乃ちゃん、ごめん。」
平良木はらしくない声を出して、そっと私の手を握りしめた。
壊れ物を扱うように、そっと。
「もう、大丈夫だから。大丈夫だから。」
すっかり熱の引いたアスファルトに座り込んだ私に合わせて、平良木龍も膝をついて。
ぎゅっと、体を包み込んでくれた。
甘い香水の匂いと、優しい体温が心地よくて。
いつまでもあいつは、子供をあやすように抱きしめていてくれた。
「…平良木、昨日はすまなかった。」
「うん?いいよ。もう忘れた」
丸い月と街灯が照らす道を、二人で歩いていた。
繋がれた手はそのまま、私をすっぽり包み込んでいてくれて安心出来た。
「明日は…」
「ん?」
「明日は来るのか?」
「うん。応援しに行く。」
「…そうか。」
何故か、顔が微かに緩んでいたのだが、私はそのことに気付けなかった…。