みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
明け方近くに目覚めた私は、いそいそと大きなベッドから抜け出した。
ピクリと社長が反応したのは分かったけど、急ぎ足で裸のままフロアを歩く。
床に散らばっていたランジェリー、さらにクローゼットからバスローブを取り出す。
そしてシャワールームにこもり、コルクを一気に捻った。一瞬の冷たさで身体は縮こまったものの、すぐに温かくなり一息つく。
ザーッと、小さく肌を打ちつけては跳ねるお湯に全身は濡れていく。もくもくと立ちこめる湯けむりで、あっという間に室内の温度も増す。
真っ先にシャワージェルを馴染ませたのは、肌に残る情事のアトを葬るため。
ほんの数時間前まで続いていたセックスで、身体はすっかり彼に満たされた。
彼の質量に埋め尽くされ、幾度と突き上げとかき混ぜられたナカも。蠢くような舌で舐め回されて、噛みと紅い痕跡が残っている気怠い身も然り。
――消えないモノ以外すべて、一刻も早く洗い流してしまいたい。
本当はすぐにでもシャワーを浴びるべきだったけど、後処理で精一杯だった。
仕事とパーティーでの疲れも重なり、あまりの疲労に負けてしまった私。
さらにソファで眠るつもりでいたのに、つくづく予定を変えられてもいた。
「風邪引くよ」
それも掠れ気味の艶ある声で、社長がシーツを肩までかけたせいだ。眠気にあっさりと負けた私は、そこからパタリと記憶がない。
そんな時、つくづく女の非力さが恨めしくなる。好意に甘えた自分を、今さら叱咤しても遅いけど。
「……寝たくなんてなかった」
ザーザーとシャワールームに響く流水音は、都合よく小さな本音をかき消してくれた。