みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
マンションは帰宅途中に位置するため、お送り頂くことは可能だった。
しかし、自宅がバレたくない私は、彼らと共に社屋へ直帰させて貰ったのだ。
「ふぅん」と、興味なさげな返事にホッとする。
「改めてご報告申し上げますが、今回は滞りなく終わりました」
「ああ、分かった。早急にしてくれ」
「はい」
了承した直後、なぜか鋭い視線が向けられる。顔にこそ出さなかったけど、朝から恐ろしい。
「出てくるから、あとは頼む」
そう言って席を立ったチーフの背中を見送ると、私はひとりデスクへつく。
まだまだ始業前とあり誰も来ず、静かな室内でひとりPCの電源をONする。
まずふせんメモの処理、書類作成やメールチェックに勤しむことにした。
つくづく周囲は、何を考えているのか分からない男ばかりだと思いながら……。
その日は不在中に溜まった処理に追われ、社長とは関わることもなく早めに帰宅。
溜まっていた洗濯機を回す間に、テイクアウトしたご飯を食べることにした。
「うーまいー」
テーブル上には鯖の味噌煮、そして煮物の詰め合わせが並ぶ。
乾いた喉を潤す芋焼酎のお湯割りにホッとしながら、手作りの美味い総菜を味わう。
これだけで日本人に生まれて良かったと思う。シンプルかつヘルシーなのだから。
昨日から疲れる料理ばかり食べていて、とかく私の舌は日本料理を求めていた。