みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


所詮メガネというツールがなければ、彼と戯言すら言い合えない自分に憤る。


骨ばったその指先で身体を弄られるごとに、熱い息と甘い声しか吐き出せない。


そうして見事に弛緩した私のナカは、目の前の男に貫かれるのを待つだけ。


ピリッと、フィルムの破れるような小さな音が聞こえて、静かに目を閉じる。


今日また受け入れても、奥で熱く深く繋がっても、私たちの心は交わらない。


性欲処理のセックスが虚しいことなんて、とっくの昔に分かっているのに。


――なぜ大人は体の言い訳をして、都合の良い方へ逃げてしまうのだろう……。


 * * *


「今週は無しにして下さい」

「いや、今回は食事をしよう。
たまには朱祢を労るのも役目でしょ?」


希望を却下された挙句、この言葉を聞かされてつい眉根を寄せてしまう私。


ほんの5分前まで人の身体を弄んでいた男の科白か?と、口にするのは抑えた。


「お構いなく」

その代わりにシャツのボタンを手早く留めながら、冷たく返しておくことに。


この部屋にシャワーが設置されていることに、今日ほど感謝したことはない。


てっきり仮眠用に浴びるものと思っていたけど、……これは前例があるだろう。


とはいえ、私も言われるがままにシャワーを浴びて、ダッシュで着替えている現在。


身体はサッパリしても気だるさは消えず。情事後に仕事へ帰される方が、最も仕置きだ。


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