みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
そんな私の胸に紙袋を押しつけた社長は、隅に置いたままだったレジ袋を開く。
「サラダとフランクフルトを酎ハイで?」
「食欲と睡眠欲を効率よく得られますが」
「ハハ、じゃあ本当にタイミング良かったな」
結局、彼の言われるがままに彼を狭いリビングへ上げることに。真っ直ぐ進んですぐのリビングダイニングに案内する。
「どうぞ」
奥へと通じる自室の扉を開けても、社長を先に入室を促すのは職業病だろう。
「お邪魔します」
「突然いらしゃったので、汚くても我慢なさって下さい」
「いや、綺麗じゃん」
「物がないだけです」
そこは手前に小さなダイニングテーブル、奥にテレビとソファというブルー基調の空間。
良く言えばシンプル、悪く言えば物がなく寂しい。晴たちからは、男の部屋みたいだと言われている。
「朱祢らしいね」
彼は周囲をじろじろ見ることもなく、室内をサラッと一瞥したのち私を捉えた。
「家主そのままにつまらない部屋です」
クスクス笑われながらでは褒め言葉と取れるわけない。私はここでも表情を崩さずに言う。
「そうじゃなくて。物に執着しないというか……あ、きっと断捨離が上手いのか。うらやま」
「違う!私はそんな人間じゃない!私は」
「――朱祢?」と、声色を落として名を呼ぶ社長を前に、すぐに我に返った。