みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
しかしながら、このホテルを含めたグループ企業の経営者である里村氏。
それゆえ前回の時と同じく、個室と思っていたのに一般席に案内されたのだ。
他の席と比較すれば死角になるのだが、“彼ほど”の男がこの席で納得したとは妙に感じる。
「どうかした?」
ここへきてもエスコートを受けずに佇む私を、向かいの席から黒い瞳で窺ってきた。
「何をお考えですか?」
「ハハッ、言うね。まあ、畏まった席より気楽にしたいだけ。ほら、俺たち友人でしょ?」
「……そうでしょうか」
――アンタと友人になるなら、喜んで珍獣ハンターの仕事を受けてやるっつーの。
どこか釈然としない言葉に眉を潜めつつも、私は大人しく席に着くことにした。
* * *
「じゃあ、この時に乾杯」
「……はい、乾杯」
アペリティーヴォ(食前酒)に選んだペリーニで、まずはグラスを掲げ合う私たち。
彼が優雅にひと口飲んだのを見届けて、私もグラスに口をつけて続いた。
空きっ腹に甘ったるい洋酒を流して、一体なにが美味いんだ?と思ってしまう。
そんな些細なことに気分を害しては、冒頭から自身を宥めてばかりいるのだ。
「今日はメガネ外さないの?」