みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
ひやりと心が冷たくなる。それは言葉の真意を察したがゆえ、当然の反応だった。
「こうして見ると本物と比べれば少し透明さがないけど、十分だよ」
加えて言い放った彼の眼差しは鋭さを増し、私はますます目が逸らせなくなる。
十分などと無礼な発言にも反撃出来ない。これでは事実だ、と肯定しているようなもの。
――結局のところ、彼女を通してしか見て貰えない存在だと自嘲したくなる。
秘書の間宮の姿でも、私は何も変わっていない。里村氏に見透かされていた自分の愚劣さが、自身をまた追い詰めていく。
それでも、私は私だと主張したい。しかし、何も紡げずにもどかしさだけが募る。
「朱祢ちゃんは唯一、身代わりになれるじゃん」
破顔一笑を浮かべたその顔で、土足で心に踏み込んでくる容赦なき発言。
その卑劣な言葉は聞くに堪えず、私は途中から手のひらで両耳を塞いだ。
やめて、やめて!私が彼女の身代わりになれるわけない。……なぜこの男まで、彼女を欲するの?
「ねえ、違う?」
無言を貫こうするのを阻むように、詰問してくる目の前の男が悪魔に映った。
いささか狼狽しつつも耳から手を外し、奥歯を噛みしめて彼を見据える私。
彼女のことを軽率に話すような男に揺すられて、こんなところで決して屈してはいけない。
――生半可な思いを抱いて、ここまで生きて来た訳じゃないのに……。
「……何のことを仰っているのか、分かりかねます」