みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
大体ね。CK社の社長と秘書さん、そして私と高瀬川社長のコンビで決定的に違うところがある。
「あら社長…、折角のアプローチ失敗ですわね。
今後も暫く専属は変わらず、で宜しいかしら?」
「そのようだ」
どっと疲れの増した私の顔を鼻で笑ったクール秘書は、顔立ちそのままの強気発言で里村社長を見つめる。
CK社の2人を見ていれば、“カンケイ”があることくらい誰だって気づくだろう。…お互いに割り切っている気もするけど。
「でも、高瀬川社長」
「何でしょう?」
「秘書のポストが空いた時は、私にお知らせ下さいね」
でなければ、私の隣で悠長にコーヒーに口をつけている社長に、この場であからさまな熱視線を送らないだろう。
こうなると、もはや清々しい秘書さん。巷の肉食系男子以上にどん欲だから、その美貌を保っているらしい。
「美人のお誘いにクラクラしますけど、」
さて、どう返答するのか高みの見物だ。と、隣のフットワークの軽い男の言葉を待っていたのだが。
「あいにく私は、この子を第1秘書に据える日を待ち侘びているので」
「っ、」
しまった、と思っても時すでに遅し。大きな手で肩を引き寄せられ、近づきたくもない男がクスクス笑う声が木霊する。
さすがにメガネで動揺への対処はムリ。社長とこれ以上の距離を詰めたくない、と声高に叫びたいのに…。