みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
何も出来ずに俯くのがどれほど悔しくて惨めか、爽やかな香りを漂わせる男には分かるまい…。
話が随分と脱線したものの、これはビジネスでは欠かせない。ようやく商談もまとまり、CK社の社長室を退室することになった私と社長。
ラストに4人で結果を表すように固い握手を交わせば、これで私も役目を少なからず果たせたと充実感に包まれる。
もちろん社長がビジネスを取り纏めるけども、秘書のサポートがまたこういった場では重要となるため。
ホッと一息つきたいほどの疲労を感じるものの、それはまだChainへ戻るまでとっておかなければ…。
「最近ゴルフは?」
「いやー、月イチでラウンドはしているんですけどね。
やっぱり俺、テニスの方が」
先方のお二方が見送ると立ち上がったため、4人で歩くエレベーターまでの道程も彼らにとっては談笑タイム。
「フッ、下手なやつの言い訳だ」
「ちがいますって!」
「早くシングルになれよ。でないと誘わねえ」
「…それは果てしない、」
「極上の女を手に入れるより健全で簡単だろうが」
軽くあしらわれている高瀬川社長は、仕事中には垣間見れないこの表情でまた女子たちを虜にするに違いない。
――極上の女を手に入れるつもりがナイ男だもの。どこまでも里村社長の言葉は届かないよ…。