みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
「透子が死んだ理由も知らない俺のことを案じてた?」
「……え?」
「透子は……里村さんに抱かれたって言った翌日、俺の元からいなくなったんだ」
「う、そ」
「嘘じゃない」
そう口にした社長の声は、先ほどまでの勢いを失っていた。同時に新たな事実を知らされ、こちらの頭も混乱している。
「だって!……と、透子ちゃん、別れたって」
私は透子ちゃんからずっと、病気を隠して別れたことは聞いていた。
でも、抱かれた?その相手が里村社長?……そんなの嘘だよね?
「信じてなかったし、別れたいがためのこじつけだと思ってた。
里村さんがあとで嘘だと言ってくれたのに、……プロポーズする直前に振られて、正直その時は信じられなかったんだ。
ようやく行動を起こした時には遅かった。……桔梗谷さんの力に屈したんだよ。朱祢も娘なら、その意味が分かるだろ?」
コクンと静かに頷いた私は、透子ちゃんが語っていないだろう桔梗谷の真実を話すことにした。