みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
桔梗谷 禎一は、あまり公の場には出ないが、日本の政財界あらゆるところで力を持つ人だ。
表向きは財界人と呼ばれているが、裏社会を牛耳る人物である。
父がひとつ指示を出せば、企業を潰すことさえ赤子の手を捻るように易いのだ。
それゆえ彼にかかれば、透子ちゃんが所在を隠すことなど簡単だっただろう。
ただ私が桔梗谷家との関係を伏せていたのは、別に理由があるけれど……。
私と透子ちゃんは、母親違いの姉妹だ。そして私と彼女が出会ったのは母が亡くなった直後で、私が高校生の時だ。
いや、その時に桔梗谷が現れて私の父だと告げられた。
その際、私を出産するまで銀座のクラブでママをしていたことを知らされる。そしてそこで桔梗谷と出会い、一夜を共にしたことも知った。
感情のままに避妊せずに及んだ結果、ただ一度限りのはずが妊娠した母。身を隠すようにクラブを人に譲ると、生まれ育った千葉へ向かったらしい。
桔梗谷に知らせず出産し、私とふたりそれまでの蓄えとパートとして働き育ててくれた。
だが、私が1歳目前の頃に桔梗谷がアパートを突き止めたという。