みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
もちろん初めて会った時は共通点など見当たらず、可憐な透子ちゃんを前にしても義理の姉だと受け入れられなかった。
母方の親戚もおらず、ひとりぼっちになった頑なだった私の心をあたたかい笑顔で溶かしてくれるまでは……。
「……私は、透子ちゃんから、別れたとしか聞いてません。……だから、」
「……透子の所在が分かったのは、……彼女の通夜だった」
私は透子ちゃんのお母さんとは相容れられず、また高校はそのまま通いたいからと千葉のアパートに留まることに。
大学受験も控える私を案じた父の計らいにより、卒業までは桔梗谷家の老いたお手伝いさんと共に住むことになった。
おばあちゃんのような優しいお手伝いさんこと木下さんのお陰で高校を卒業し、無事に大学も合格を決めたのだ。
何より、そんな私を支えてくれたのが透子ちゃん。休日にはよくアパートを訪れては、木下さんに休みを与えて彼女と2人きりで過ごした。
綺麗という形容詞の填まる彼女は、その頃にはもう姉として慕っていた。
受験のプレッシャー、さらに孤独感に怯える私を厳しくもあたたかく支えてくれたのもまた彼女。
私が透子ちゃんを信頼出来たのは、彼女自身が本音でぶつかってくれたからかもしれない。