みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


ママの晴によく似て、どんぐりみたいな丸い目がたまらなく可愛い女の子に私もずっとメロメロだ。


おませな発言には驚かされるけど、目に入れても痛くないって表現は正しいと思う。


「せっかく、ひまわりが好きな楓くんが来てくれたのになぁ」

調理師専門学校を卒業後――色々あってシングルマザーの道を選んだ彼女は、両親と暮らしながらひまわりんを育ててきた。


ちなみに店名のソレイユとは、フランス語でひまわりの意味をさしている。


このお店に子供連れのファミリー客が多いのも、そんなところに隠れていたりするのだろう…。


「ちょっと、私もでしょ?」

「あかねんは、ひまわりのオバさんだもん」

「晴ヒドいー!」

こうして仕事と子育てを両立する彼女に会うと、自分の悩みなんてちっぽけなもの。


“ひまわりに私の方が育てられているのよ”と、晴はよく笑っているけど。


小さな命を慈しむ姿は私まで安らぎを覚える。もちろん、大変なことは幾つもあるはず。


それを億尾に出さない晴は、本当の意味で強い女性だと思ってしまう…。



「ひまわりちゃんからすれば、十分オバさんだ」

「楓はホント、ヤな性格よね!」

「猫かぶりに言われたくない」

チッと舌打ちを返すと、そこでまた晴から私だけ優しい注意を受けるのは常。


知らん顔で焼酎のボトルキャップを開け、グラスに注ぐ楓は相変わらずだ。


そんな痴話喧嘩ばかりの彼とは、Chain社へ入社後に知り合った。そして晴を含めて飲み友達である。


< 54 / 255 >

この作品をシェア

pagetop