みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
グラスに焼酎とお湯を注いだあと、無言でそのグラスを合わせるのは慣習だ。
カツン、とグラスの当たる鈍い音が小さく鳴った。口元へそれを近づけると、芋焼酎独特の芳醇な香りが鼻腔を掠めていく。
それに急かされるようにグラスを傾ければ、温かいアルコールが乾いた喉を潤してくれる。
さつま芋の産地として有名な徳島県は、その芋で作る焼酎にも美味しい銘柄が沢山ある。
水割りの爽やかさも好きだけど、お湯割りの香りの立ち方とマイルドな味わいが私のベスト。
「あー、美味い」
「確かに」
ほんのり温かいグラスを置くと、前方から同調する声が返って来て口角を上げる。
「でしょ?ビールと違って冷えないから良いの!」
「どっちもアルコールだし、結局は…」
「もー、メンドイ男ね」
「朱祢に言われたくないけど」
「放っておいて」
本音ひた隠しのしおらしさや煩わしいモノは、この場にあるわけないけど。
足を組んで頬杖をつきながら酒を飲むとか、もはや女子力とオサラバしているに等しい。
ついでに言えば、向かいの彼にしてもネクタイ緩めて辛辣発言のオンパレード。
こうして酒とつまみを片手にストレートに言い合うのが、晴を含めた私たち3人の間柄だ。