みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
社長よりも背が高く、がっしりとした体躯の男性を、思わず凝視してしまう。
噂通りに顔立ちも綺麗だけど、ウチの社長と比べればセレブ感漂う風貌である。
「感謝するよ」
「もちろん、先輩のためならどこでも」
「軽口叩きも相変わらずだな、オマエは」
「事実を言っただけなんですけど」
「嘘も休み休み言え。一々メンドくせぇ」
何より“嘘っぱち発言”を一蹴するとは……、ことさら素敵に映ってしまう。
超セレブらしからぬ気取らない口調も、庶民の私は好感を持って観察していた。
「ところで、彼女は?」
社長を見据えていた艶やかな漆黒の瞳が、瞬時に私を捉えて尋ねている。
「ああ、彼女は」
「初めてお目に掛かります。私、秘書の間宮と申します」
社長の紹介を鮮やかにぶった切り、極上の笑みを浮かべて会釈した。
「朱祢、」
不機嫌な声色で呼ぶのは社長だけど、知らんぷりを通す。腰元に置かれた手の力が若干、強まったのは気のせいだ。
――所詮、仕事にすぎないのだから。……勘違いをすること自体、滑稽である。
「フッ、……オマエも割と苦労してるな」
「そうでしょうか?」
「妙に意地っ張りなトコも変わってねえな」
社長の反応を密かに楽しんで聞いてれば、英社長は大学時代の先輩と判明した。
ちなみに彼らは、当時のミスターにも選ばれているらしい。……世はなんて不条理なのだろうか。