みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


私たちはなだれるようにスイートへ入室した。バタンとドアの性急に閉まる音が背中越しに響く。


直後に後頭部を抑えられての噛みつくようキスは、社長のたかが外れた証拠――


「んんっ、」

それに応えて薄く口を開けば、捩じ込んでくる熱い舌先と舌が絡み合う。


歯列をなぞりながら口腔内を探っていくその舌の動きに、身体も弛緩していた。


すると、ジーッと小さな音を立てて背中のファスナーが解かれる。ストン、と呆気なく床へ滑り落ちたドレス。


キスの最中の芸当によりランジェリー姿へとされた私は、大きなベッドに引きずり込まれた。


社長は弾力あるベッドで私の上に跨がり、ジャケットを床へ投げ捨てる。そしてネクタイを荒々しく取り、シャツの首元のボタンも2つ外す。


「フッ、」

そこで何か思い出したように笑う彼。散々キスをした唇は赤さを帯び、そのセクシーさに息を呑んだ。



「この前、襲ってきたのはソッチだよ。ほんとに覚えてないの?」

「え、あ、…んっ」

齎されるまさかの事実で、今度は目を見張った。…酔った勢い?で社長を襲うとは、…自身の身持ちの軽さと無謀さに絶望したい。


私の狼狽など素知らぬ社長に、また唇を甘噛みされる。小さく開いていた口は、まるで彼を待っていたかのように再びの侵入を許す。


「ふ、んっ、」

ピチャリと水音を響かせつつ、歯列をなぞっていく優しい舌先に身も粟立った。


長いキスの終わりを告げるように離れた唇は、次に私の耳朶をひと噛みする。


「っ、」

痛くて気持ちいい曖昧な感覚に、熱の籠もった吐息が漏れた時。耳の中をざらりとした感触が襲う。


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