みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
鼓膜へ直に響く妖しい音に心は高ぶり、目の前のシャツをキュッと握っていた。
見慣れている筈の薄墨色の瞳に至近距離で捉われ、体温が急速に上がっていく。
そうして身体を撫でる彼の指先は、いやらしいほどの焦れったさを孕んでいた。
――だから私は急かすように、先を求めてしまう。人の性に逆らう理由もない。
私は彼のシャツのボタンを外しながら、鍛えられたその身体に唇を寄せる。
シャワーを浴びるよりも、早くこのオトコに触れたい。それだけに苛まれていたのだ。
すると、後ろに回った手がブラジャーのホックを外した。繊細レースがあしらわれていたそれは、片腕ずつ外されてベッドに沈む。
そのスピードに苛立ったのは私だ。ずっと見ていた薄墨色の眼差しには、焦りの色が感じられないせいで。
むしろその視線で私の身体にはさらに熱が宿っていた。裸を見られることなんて、恥ずかしさなんか通り越しているのに。
前回の“回数”は別として、この男とのセックスは2度目。……それなのに、ドクドクと鼓動は加速していた。
顔と顔の距離が縮まった刹那、頬に触れた唇――それはひどく優しくて、心に小さな痛みを与えるものだった。
すると晒していた胸を大きな手が覆うように捕らえる。形を変えて揉まれることで生まれる、欲の始まりは私の口から吐息を漏らす。
「しゃ、ちょ」
「それは止めてくれ」
そう言われても、…この立場で名前を呼べるわけがない。私は何も返すことなく目を瞑った。