LOVELY☆ドロップ
早くここから出て行きたくって急ぎ足で玄関まで向かえば、彼も後からついて来る。
あたしに帰って欲しいと言ったくせに今更いい人ぶっちゃって、なによ!!
「家まで送っていくよ」
『いらない』
そう言いかけたけれど、思わず口を閉ざしたのは、やっぱり込み上げてきた吐き気が原因だった。
「ぱぱぁ~?」
あまりの気持ち悪さにまたうずくまりそうになったところで、タイミング良く彼女がやって来てしまった。
――ああ、最悪だ。
あたしは彼女がいることをすっかり忘れていた。
あまりの悲しみと怒りとものすごい吐き気で、この世界にはあたしと赤ちゃん――ついでに潤さんしかいないと思ってしまっていた。
ここにはもうひとり、小さな天使、祈ちゃんっていう子がいたっていうのに……。
その彼女は両目を小さな手でゴシゴシ擦(コス)ってやって来た。
「どうしたの? パパ? おねいちゃん?」
どうやら祈ちゃんはあたしと潤さんの間にある、よそよそしい雰囲気に気づいたらしい。潤さんの元にたどり着くと尋ねた。
「祈……お姉さんはね、おうちに帰るんだ」
潤さんはそんな祈ちゃんにひざまずいて話している。
だけどさすがは天使だ。
祈ちゃんは何度も首を振る。
「やだ!! おねいちゃんはイノのそばにいるの!!」
祈ちゃんは潤さんの言葉を拒み、玄関に立つあたしの腕にしがみついてきた。