LOVELY☆ドロップ
「イノも~~!!」
そう言う端月さんに、祈ちゃんも右手を上げて賛成した。
「それじゃあ、祈ちゃん。一緒に作りましょうか」
「うん!!」
起きても平気なんだけどな……。
なんて思いながら、布団の中があたたかくてなかなか抜け出せないあたしは、端月さんの優しいお言葉に甘えて楽しそうに話しているふたりの後ろ姿を見送った。
こんなにゆっくりしたのは何年ぶりだろう。
半分開いている窓の隙間からやって来るそよ風が気持ちいい。
あたしは、レースのカーテンから透き通る太陽の光を浴びながら、キツネ色をした天井を見つめていた。
「あのねあのね、チーズはイノがね、ちぎったの!!」
布団の中で何をするでもなく、ぼーっとしていると、静かな部屋の中に突然聞こえた明るい声で体を布団から起こした。
目の前には大きな目を輝かせた祈ちゃんがいて、その隣に置かれているおぼんの上にあるのはリゾットだろうか。
底が深い器の中から湯気がたっているのが見えた。
トマトの香りがあたしの鼻腔(ビコウ)をくすぐる。
とても美味しそうだ。
器を覗き込めば、角切りにされたトマトと玉ねぎのみじん切り。それから祈ちゃんが言ったとおり、とろとろに溶けたチーズが乗っている。
「おいしそう……」
祈ちゃんにありがとうを言ってからいただきますと手を合わせる。
おぼんの上に置かれているレンゲを手に持ち、リゾットを掬(スク)うと口に運ぶ……瞬間だった。