LOVELY☆ドロップ
突然やってきた我慢できないくらいの吐き気に襲われた。
あたしは慌てて布団から抜け出し、台所の一角にある洗面所へ駆け込んだ。
蛇口を勢いよくひねり、水を出すと身を乗り出す。
だけど、朝食はとっくに済ませているし、今はもうお昼だ。
すっかり消化しきっているあたしのお腹には戻すものは何もない。
あたしは流れる水の音を聴きながら、まだ残っている胃のムカつきを耐えるため、両手でお腹を押さえた。
「おねいちゃん?」
後ろから聞こえた悲しそうな声に振り向くと、そこには眉根を寄せて心配そうに見つめてくる祈ちゃんがいた。
「だいじょうぶ、何でもないの。ごめんね」
心配してくれる祈ちゃんに安心してほしくてにっこり笑いかけた……んだけど、どうやらそれは失敗に終わったらしい。
祈ちゃんの大きな目には見る見るうちに涙が溜まっていく。
こみ上げてくる吐き気と戦いながらもどうしたものかと考えていると、あたしの丸まった背中にあたたかい手が添えられた。
摩(サス)ってくれる感触がとても気持ちいい。
おかげで次第に気持ち悪さは消えていく……。
後ろを見ると、端月さんが立っていた。
どうやらこのあたたかな手は彼女のものらしい。
彼女はあたしのこの行動に何かを感じたようだ。
にっこり微笑んできた。
「ねぇ。美樹さん。もしかしてあなた……」
そう言った彼女はとても嬉しそうだ。