短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
『特製栄養ドリンク』。
それは、扁桃腺をよく腫らす惠一のために、雪音が施設の厨房に忍び込んで作ってくれた、とびきりまずい飲み物のことだった。
まずさも一級だが効果も一級で、惠一はよくそのお世話になった。
「あぁ、そんなのもあったな」
懐かしそうに笑い出す和也とは反対に、雪音は心配そうな表情を浮かべる。
「惠一にぃ、今でも扁桃腺がはれるの?」
「違う、もう子供じゃない」
惠一は否定し、脈略のない話題を急に持ち出した理由を述べた。
「イギリスの民間療法でも似たような飲み物があって。そのレシピと、比べてみたいと思ったんだ」
「ふうん」
雪音は一応納得したが、
「レシピなんてないよ?全部目分量だから」
惠一の望む答えは、持ち合わせていなかった。
「そうか。ならいい」