短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~

まるで、いるのが当たり前のような笑顔だ。

「・・・飛行機、どうした」

やっと惠一の唇に、言葉が上った。ひどく掠れているが。

「濃霧で欠航」

「和也は?」

「日本で仕事があるからって、ユーロスターでパリへ向かった。そこからなら飛べるかもって」

「・・・部下を放って、無責任な奴だ」

雪音は惠一の言葉を無視して立ち上がると、全く脈略のない話題を持ち出した。

「ねえ。扁桃腺、腫れてるんでしょ」

紙袋を持ち上げて見せる。

「『特製栄養ドリンク』、作りに来たの。まぁ、ロンドンで売ってるもので同じように作れるとは限らないけどね」

雪音は、惠一の嘘を見抜いていた。

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