短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
出来上がった炒飯をフライパンごと食卓に運ぶと、そこには既に皿が二つ用意されていた。
フライパンの柄を握る私の手が重さに震えているのに気づいて、彼は素早く鍋敷きをテーブルに置いてくれた。
あうんの呼吸というやつだ。浅い仲では成し得ない。
しかし、お互いの心中を分かり合っているからこそ、今はそれがかえって居たたまれなかった。
「ありがとう」、
そう言った私の口調はどこか、他人行儀だ。
そしてまた、重苦しい沈黙が二人を包む。
炒飯をよそう、フライパンにお玉が当たる音がやけに響いて、胸に刺さる。
そのときだった。
空になったフライパンを持ち上げると、彼が突然口を開いた。