短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
階段を降りてくる音に、私は我に帰る。
鉛のように重い身体を無理やり動かして、新聞を片付けていた振りをした。
リビングに彼と二人。
何を話したらいいか、分からない。
居たたまれなくなって、テレビをつけた。
「…お昼、どうする?」
彼が遠慮がちに訊ねてくる。
気がつけば時計の針が十二時を過ぎていた。
食欲なんか全くなかったが、リビングを離れるいい口実ができた。
私は、簡単に何か作るねと言ってキッチンに向かう。
さっさと食べられるものにして、あとは買い物に行くとか言ってさっさと外出しよう。
重苦しさに耐えきれなかった私はそう決めると、残りご飯を使って炒飯を作った。