短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~

「さかき、さかきぃ!」

皆が寝静まった夜中。
泣きながらスミレが、突然部屋に入ってくる。

そのままの勢いで榊のベッドの中に飛び込んできた。
スミレは今9歳、幾ら小柄な彼女でも容赦なく飛び込んでこられたらそれなりの威力になる。
寝ていた榊は、スミレの膝小僧がクリーン・ヒットした脇腹の痛みをこらえながら
「どうされましたか?」
と尋ねた。
この時間帯のスミレの突撃訪問は初めてではないので、大方予想はついていたのだけれど。

案の定スミレはしゃくりあげながら、怖いオジサンたちに追いかけられ、逃げ込んだ家の主人が実は人食い化け物でまた追いかけられ、緑色のネバネバしたもので捕らえられそうになり、それを避けたら突然現れた底無しの崖に落ちてしまったと話した。



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