短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~

「サカキ、ここにいたの」

食器室のドアを開けそこに榊の姿を確認すると、スミレの顔は高貴な令嬢から子供の顔に戻った。

「ねぇ、何やってるの」

「お召し物が濡れてしまいますから、お離れください」

「いいのよ、こんな服。どうせ一回しか着ないのだから」

言葉の端にスミレの気持ちが透けて見えて、榊はそれ以上制止するのを止めた。

スミレが着ていたのは、実のところは仕立て、生地、デザイン全てに上流階級の気品と財力が伺える代物であり、特別な家の特別な日の装いに恥じないパーティードレスだった。しかしその華美な装いも、スミレに「こんな服」呼ばわりをされ輝きを潜めたように見える。

スミレは榊の隣に並ぶと、榊の仕事の観察を始める。
榊はシャツをまくり、大量の食器を洗っていた。



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