短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
「食器洗いはメイドの仕事なんじゃなくて?」
榊の顔をのぞきこんだスミレの顔が、今日はいつになく近く感じられて、榊は内心驚いた。
ヒールのせいだけではない、いつの間にこんなに成長していたのだろう。
「来客時の食器は、私が管理することになっております。という説明をしている場合ではなく、お嬢様」
高価なドレスにしみができては一大事だ。榊は作業を中断せざるを得なかった。
水道を止め、タオルで腕を拭くと、
「会場へお戻り下さい。本日の主役は、お嬢様なのですから」
そう薦めた。
水音が絶え室内が静かになると、遠くから、上品な弦楽器のメロディーとともに大勢の人のさざめきが聞こえてくる。
今日は、スミレの14回目の誕生パーティーだった。