短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
大地の後追いができたのは、大学までだった。
卒業後、大地が選んだ職業は地元の町の、消防士。
そりゃ女性だって、なろうと思えばなれるかもしれないけど。
「ただの大地の追っかけ」という不純な動機しかない繭には、そんな過酷な職業が勤まる訳がない。
とりあえず地元に帰ってきたけれど、繭は結局就職浪人になってしまった。
「お前、一体何がしたいんだよ」
わざわざ大学を卒業したのに近所の弁当屋でバイトをしている繭を見て、大地はそう言って笑った。
笑った後に、
「じゃあ、俺の嫁さんにでもなるか?」
と言ってくれた。