911の恋迷路

 「……認めてくれ」

 認めたら隼人は傷つく。
 嘘をつき続けても、明らかになったときに、より隼人は傷だらけになる。

 黙っていることも、認めることになる。


 果歩は敢えて返事をした。

 「会った…陵くんに逢いに行ったの」

 「ふたりで行ったのか」

 「健兄の車で3人で」


 安堵なのか動揺を隠すためか、隼人は大きくひとつ、息をした。

 そして後ろから果歩の頭をポンっと軽くたたく。

 「メールの返事くらい、さっさとしろや」

 

 (隼人……今、振り向いていい?)

 
 「冷えるな」

 

 隼人が果歩に顔を向けずに立ち上がり、
 キッチンに置いたビニール袋から野菜や肉を取り出す。

 「今夜、鍋でもどうかと思ってさ。買ってきたんだ」
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