911の恋迷路

 彼女だったらうれしい意志表示だ。愛ゆえの束縛。
 なのに果歩は素直に喜べない。

 真摯な愛情を受ける以上に幸せなことはない、と頭ではわかる。

 

 (なぜ満足できないの?)
 
 果歩の心が、隼人のところで留まらないのだ。
 陵を待ちわび、そして難しい立場の慎へと気持ちが傾いていく。

 過去に陵と交際していた事と陵の現在の病を思えば、
 弟へと心を移していく果歩の恋心は許されるものではないだろう。


 難しい恋の迷路。

 その恋の迷路を果歩の想いがさまよっている。

 

 乱れてちぎれそうになって、どこへたどり着くのだろう。
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