911の恋迷路
「陵くんは、どうですか」
果歩の問いに、稔の甲高い声が小さくなる。
「兄は変わりないですが……何となく寂しそうで」
忘れてしまう病といっても、肉体と精神をもつ人間なのに変わりはない。
果歩は、稔と慎の争いに、
陵が割って入ったのは、偶然でないと思う。
「失礼ですけど……、慎さんが『手癖が悪い』とは、
どういうことですか」
「言葉のとおりです。昨日、聞こえてしもうたんですか」
咳払いをして、稔が言った。
辺りをうかがうような、小さな声だ。
「こちらから、かけ直していいですか。すぐにかけ直しますから」