911の恋迷路

「似てますか?」


 黒い瞳がゆっくり瞬(マバタ)きをする。

 コクン、と頷く果歩の膝に涙がこぼれた。


 沈黙。





「会わないほうが良かったですか?」


 慎の低いかすれた声は、陵のものとは違っている。その違いが果歩の頭を少しだけ冷静にしてくれた。


 (この人は陵くんじゃない)

 少しずつ果歩は自分の心にに言い聞かせる。


 大丈夫、陵くんじゃない。

 動揺しないで。大丈夫よ。


 この人は、陵くんの弟。


 

 自分を立て直そうとハンカチで口元を隠して泣き笑いしてみる。


「そんな事、ないですよ」

 (声、震えちゃった)

 

 ダメ出しを自分にする。
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