911の恋迷路
「そんなこと、ないよ。あたし、稔さんのほうが緊張する」
「あ、俺も」
いつも「僕」なのに「俺」。
今日の慎は気負ったところがない。
それを伝えると慎は嬉しそうに笑った。
(もっと笑えばいいのに)
果歩は笑って陵に似た瞳が細くなるのをもっと見たいと思う。
「花井さんにセッティングされたら、仕方ないです。
稔に首を差し出す覚悟で来ました」
「はは。……確かに、稔さんきつい感じ、
険しい顔ばっかりしてたよね」
俺に対してはいつもあんな怪獣ゴジラみたいです、
という慎の愚痴に果歩は吹き出す。
「それ、酷い」