911の恋迷路

 そんなに待たされずに、稔の携帯に繋がる。

 果歩は、稔にお願いをした。

 「さっきの店は気まずいだろうから、
  ハイ、そこならハンズが近いですね、行きますね」

 
 あたしは、ふたりの仲人だから。

 電話を切った果歩は笑う。

 「もう大丈夫だよ」


 「俺、またやっちゃったな」

 慎は凹んでいる。

 「当てつけでしたことじゃないし。

  ……本気で怒ってくれて嬉しかったよ」

 

 でもね。

 駅から雑踏の中を東急ハンズに向かいながら、果歩は続ける。


 「あたし、あの指輪、もらって帰ろうと思う」

 「辛くないか?」

 「切ないけど、やっぱり嬉しいもの。
  きっと陵くんは、病にならなければ、ちゃんと渡してくれたと思う。

  そう思いたいから」





 
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