マスカレード【仮面de企画】
部屋の中は真っ暗だった。

足をどこかにぶつけたのか、美幸がおよそ女の子らしくない悪態をつく。


「目がいいくせに気がつかなかったのか?」

俺は美幸を捕まえて、部屋の中央にある大きなソファに座った。


「わたしの力は目に集中してるから、暗い中では何の役にもたたないのよ!」

「そいつはいい」


俺は美幸を引き寄せてキスをした。

美幸は最初は驚いたように抵抗していたが、すぐにおとなしくなった。


「お前、どうしていつも俺を避ける?」

「避けてなんかいない」

「本当に? 俺は何かお前に嫌われるようなことをしたのか?」

「嫌ってなんかいないよ!」

「なあ、まだるっこしい事は苦手なんだ。はっきり言ってくれないか? 確かに俺はうちの兄貴や従兄の圭吾のように、女に優しくないかもしれない。でも、お前の事は大切にしてきたつもりだ」


暗闇の中で美幸が鼻をすする音がする。


「わたし、たっくんの事ずっと好きだった」

「なら、どうして……」

「中三の時にパパとママが話しているのを聞いたの。たっくんに彼女がいるって。わたしは可哀相だけど、たっくんに相手にされることはないだろうって」

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