スピリット・オヴ・サマー
 憲治の動揺を無視して「少女」は、
「それに、前にも言ったど。おらぁ、憲治さん憑り殺そうなんて思わねぇ。憲治さんには長生きしてほしいがら、これでさよならってごどでいいべ?」
と、どことなく作り物じみた明るさで、しかも背中で、別れを告げて更衣室に歩き出した。
 憲治の心が急激な収縮に痛む。「少女」が小さく、愛しく見える。今まで以上に。寄り添いもした。キスの手前までも行った「少女」の、その微笑みの中に今までとは違う、自分と同じ感情のゆらぎを見た、様な気がしたのだ。
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