スピリット・オヴ・サマー
「だ、ダメだァ、これ以上会ったら、本当に、本当に憲治さん…、」
 そう言って「少女」は深く俯き、再び憲治に背を向けた。
憲治は再会のための言い訳を何とか考え出そうと、苦し紛れっぽい理由を口走る。
「名前を…、」
「え…?」
「お前に、名前を…、俺とお前にだけわかる名前を、だから、もう一度…。」
「…憲治、さん…。」
 言葉は続かなかった。
 「意識」し始めた瞬間から、沈黙は重力となって淀み始める。
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