スピリット・オヴ・サマー

　「少女」の白い肩越しに見える、俯いた横顔。その横顔が、視線を下に落としたまま答える。口元は見えない。
「…夜、夜にしよ。８時、陽が落ちてから、体育館の後ろの、桜の樹の下で…。」
　「少女」の頬の辺りにふわりと紅が挿した。
　その瞬間憲治は、昨日見たのと同じ「翳り」を、再び「少女」の横顔に見てしまった。この前と同じ様に瞬きの間、でしかなかったのだが、以前より明らかに見える様は憲治を驚かせるには十分だった。通常は見えるはずの無いもの、生きているモノには見ることの許されないものを見たのだ。