スピリット・オヴ・サマー
 そう言って微笑んだ聖菜の瞳には昼間見た突然の陰りは微塵もなく、憲治と二人、街の中を初めて連れ立って歩いた中学の頃の輝きがあった。憲治はその聖菜の瞳の輝きに「赦されている自分」を映した。
 感謝が憲治の口元に、静かなため息を呼ぶ。
「私の話につきあってくれるなんて、すごく、嬉しいです。」
「とんでもない。俺のほうこそ感謝してんだ。」
 そう言って自動販売機の前に立つ憲治の背中を、聖菜は不思議そうに見た。
「感謝、ですか?」
「そう、心からの。」
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