スピリット・オヴ・サマー
 今一度思う。もう一度、あの銀翼の夢を追いかけることが出来るだろうか。もし、それに固執するのではないとしても、他の夢でもいい。何か「生きている自分」を実感できる何かを。どうだろうか。
 空の蒼が目に沁みようかというほどに長いこと空を見上げていた。が、答えを出せぬままに聖菜を待たせることを気の毒に思い、憲治はそれまでの自分を語ることにした。
「見ないように、していた。」
 憲治はそう言って少し笑った。
 聖菜は俯いて、憲治を気遣うように静かに言った。
「そう、ですか…。」
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