スピリット・オヴ・サマー
 青くさいためらいに脚を取られながら、どぎまぎと話し始める聖菜。同じように、自分を無理に落ち着かせようと呼吸を抑える憲治。
「私、この校舎で夢、を見ました。夢だったのかどうかも分からないけど、会ったんです。ある女の子と。」
 憲治の直感が、聖菜の言う少女の姿を呼び覚ました。「憧子」だ。憲治は千佳子の時と同様、そのことに触れるべきかどうか戸惑った。しかし、である。
「その子、『憧子』、って言ってました。」
 その名前は聖菜の口から出たのである。憲治は身震いした。
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