スピリット・オヴ・サマー
 そう言って聖菜は憲治のほうを見た。聖菜を注視していた憲治は不意に聖菜と間近で目線を交わした。
「…っ、」
 二人の時が凍りついた。互いの瞳だけが、逃げ場所を探して宙を小刻みに駆ける。
 知ってか知らずか(たぶん冷やかしだ)、ランニング中の陸上部の一団が二人の前を通り行くときに、タイミング良く、北中、ファイト、と掛け声を駆けていった。電撃を受けたように飛び上がる二人。
「あ、あのぅ、笑わないで、聞いて下さい。」
「…何。」
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